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脱ぎ散らかしたマーチンのブーツ。
無為に積もる煙草の吸殻。
体温と焦れったい布擦れの音。
天神の街も百道浜もすぐそこにあった。
それなのに、我々はどこへも向かわずに、汚いビジネスホテルの一室でただセックスだけを繰り返した。
自分がいくら己の過去を話しても男は、「そういうこともあらーね」と受け流し飄逸として、
それでも斯様な身を抱きしめてくれる華奢な手首と大きな手を自分は確かに愛していて、長い睫毛もセクシーな声も確かに愛している、
あんなに心から安堵することなどないのに、きっとひとつとして我々は相容れない。
「お前が欲しい」と言ったその唇が直後、「でもおれは人として欠陥しているから、お前を欲することすら許されない」などと言う。
「あんたが私のものになるなら、私はあんたのものになってもいい」と溢したとて、
男は壁にもたれ、いつもの飄々とした様はどこへやら、自分に一度たりとも見せたことのない悩ましい顔で煙草を吸っていたのだった。
バカな話だ。これは呆れたと言っても許されるかもしれない。自分が欲しいものは金で買えるものではないのに。
例えば自分が身体中に刺青を彫っても、バカみたいに酒を飲んでも、男は自分を突き放すことはけしてしないだろう、
きっとまた自分を引き寄せてその熱い胸板に自分の体を押し付けるのだ、それが嫌でたまらない。
そうではない、違うのだ、自分が言いたいのはしようもない子供の癇癪と大差はない、ただ心がここにあることをわかってよ。
過去を思い出しては今日も酒が進んで小気味よい。








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