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2019.03.10

  名取駅のコンビニでマルボロを買う。これは棺桶の釘だ。深く理解していた。
  バスストップでエルレガーデンを聴きながら時間が過ぎるのを待つ。次々と流れるバスストップの名前を覚える気はなかった。
  ようやく海に行こうと思ったのだ、今年は。
  波濤を眺めながらマルボロを一本吸う。思い出したようにあれが一番好きだった曲を再生する。
  やはり、英語の歌詞は何を歌っているのか自分にはさっぱりわからない。
  何を話せばいいのかはわからなかった。
話したいことはたくさんあったはずだった、恐らく。ただそれも取るに足らない話だったはずだ、恐らく。
  音楽を聴きながら砂浜の貝殻を拾う。
  君と集めた流星を拾うように、骨を探すように、貝殻やガラスの破片を拾いながら歩いた。
  がらくたにしか見えなくても、何の意味もなくとも、自分には鮮やかに光るものに見えたから拾い上げるのだ。
  思ったより、深い慟哭はなかった。むしろ、寛かな気分だった。



2019.03.11

  傘を開いたままでいるか閉じるか悩んでいた。この程度の小雨なら、雨に打たれていいとも思っていた。
  刺青を彫った。君のことを考えたりした。
  マルボロを吸う、まるで句読点のように。
  この刺青は願いでもあり、誓いでもあった。同時に呪いでもあり、魔法でもあった。
  いつでもあのときの陽だまりに包まれていられるように。
  はじまりの音楽がまたこの胸に流れていた。
  もう一度君と目が合ったら、あのとき君が自分の手を引いて逃げてくれたときのように、今度こそ君を奪って誰一人知らない街で一緒に暮らしたい。
  こんな日はそういうつまらないことも考える。








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