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誰一人いない美しい森の中にぽつんと存在する、二階建ての小さな白いアパートに自分は住んでいる。
誰もいないこの森で、自分は一人きりで常に退屈な気分でいたが、自分の心を蝕むものは何一つなかった。
だから、孤独だとしても、穏やかな気持ちで日々を過ごしていた。
自分はそのアパートの二階の右から二番目の部屋に住んでいた。
ある日、友人は何の連絡もなく後から入ってきて、一階の左から二番目の部屋に住み始めた。
部屋は自分と友人の部屋以外全て空いたままだが、とにかく我々は、美しい森の白いアパートに住むことになった。
相変わらずその姿は生前のままだった。
そこは恐らくはこの日本のどこかの森の奥深くで、あたりには人も家も何もなかった。
だから我々は、学校にも行かず、働くこともせず、
この白い部屋で、彼はギターを弾き、彼は歌い、
自分は彼の作った音楽を聴いたり、彼が歌詞の上に載せた意味を考えたり、
ガラスの箱によく澄んだ水を入れ魚を飼い、魚が快活に泳ぐ姿を眺めたり、
そんな些細で退屈とも言えるしかし確かに幸福な日々を過ごしていた。
互いの部屋の模様替えをしたり、互いの写真を撮り合ったりもした。
誠不思議なもので、けして自分の顔や体の造形の話ではないが、
彼が撮る私の写真は常に美しかった。
自分は幸福だった、幸福と呼ぶには余りあるほど。己が死んでも渇望してやまなかった戻らない幸福が今この手の中にあるのだ。
この森のこのアパートでは、まるで時が止まっているかのようだったし、実際そうと言っても間違いではないだろう。
自分が望む限りの希望と光だけを詰め込んだ戻らない過去の夢。
目が覚めて、君のことを思った。








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