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自分は、誰からも祝福されずにこの世に生まれた。銃弾の雨の中を生きていた。孤独だった、ひと言で言えば。人生を呪った、大袈裟に言えば。
友達は一人もいなかった。
だが、中学に入り、ある男に出会うのだった。
幼い自分は、それからの人生において宝石の日々と、その後に砂漠の中を休むことなく歩き続ける日々が訪れることを知らなかった。
彼は、同じ学年、同じクラスの少年だった。色が白く、学ランを着込んだ線の細い姿は倒錯的だったことを覚えている。
出会いは本当に些細なきっかけだった。呆れて、対峙とも言えない。
その日から彼は自分に話しかけるようになった。彼とは音楽や漫画の趣味が合うことがわかった。
血縁全員に疎まれ、友達なんて一人もできなかった自分が、好きな音楽や漫画の話ができる人が今はいる。本当に嬉しかった。
そして彼も家庭に居場所がなく、孤独な人だった。だからこそ同じにおいを感じ、幼い我々は身を寄せ合ったのだろうか。互いの不幸話で笑い合った。そんなことを今でも覚えている。
けして口数の多い人ではなかった。寡黙な人だった。切れ長の目は、全部を威嚇して生きているふうだった。
しかし、自分にとっては陽だまりの人だった。彼の側にいると穏やかな秋の日の昼下がり、陽だまりで居眠りをするように心から安らぐ気持ちになった。
思い返せば、これまでの人生において苦しいことしかなかった。
だからこれからはもう、一生笑って暮らせると思った。
痩せ細った手を握ったら、胸の奥が痛かった。今になって考えればそれは幸福と呼んでも許されるだろう。
人生の中で、最も幸福な時間だった。
ある日見た夢。
夢の中の自分は時間遡行の力を有していて、何度も友人を助けようとする。その度に失敗して、何度繰り返しても全て失敗して、何度も友人を殺し続け、それでも何度も時間を巻き戻した。
次で最後だと知っていたが、結局また救うことができず、残ったのは腐り落ちたあの人の亡骸とそれを前にただ無力で何もできなかった自分の姿だった。
白い肌、痩せ細った手、凍りそうな睫毛。
愛していた。心から。
宝石の日々が続けば、死んでもいいと思っていた。耐えがたきに耐えるだけが人生か。
流星の街。あの星の一つが真っ直ぐに我々を突き刺そうとしていた。








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絵に描いたような田舎の道を歩き、大きな橋を渡り、我々が通う学校を通り過ぎ、ようやく街らしい街になる。
しかし、開いている店だとコンビニを含めて何一つないのだ。再三言うが、この場所にあるのは街の灯と星だけ。
帰り道、流れ星を見た。
この場所は、日本一星が綺麗に見える、ただそれだけの町だった。
柄にもなく浮かれた様子の彼をまるで宝物のように思った。
彼は、何か祈っただろうか。
彼は寡黙で自分はそれを汲み取りきれないことが普段からしばしばあった。
しかし、確かに自分と彼の間に発生していたその心で、何かを切に祈ったのだろうか。
自分は今思えば、この宝石の日々が永遠に続きますように。そう願えばよかったかもしれないが、嘘のように美しい彼の姿から目を離すことができなかった。
そしてその瞬きをこの胸に深く刻み込んだ。いつでも自分が見たものを忘れないように。
あのときの流星は、あのときの幼い我々の両手で掴むことができただろうか。
あの星が悪魔の目のように光り、我々を射抜く閃光となったとしても。
今もこの手に何か残ったのだろうか。








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誰一人いない美しい森の中にぽつんと存在する、二階建ての小さな白いアパートに自分は住んでいる。
誰もいないこの森で、自分は一人きりで常に退屈な気分でいたが、自分の心を蝕むものは何一つなかった。だから、孤独だとしても、穏やかな気持ちで日々を過ごしていた。
自分はそのアパートの二階の右から二番目の部屋に住んでいた。
ある日、友人は何の連絡もなく後から入ってきて、一階の左から二番目の部屋に住み始めた。
部屋は自分と友人の部屋以外全て空いたままだが、とにかく我々は、美しい森の白いアパートに住むことになった。
そこは恐らくはこの日本のどこかの森の奥深くで、あたりには人も家も何もなかった。
だから我々は、学校にも行かず、働くこともせず、
この白い部屋で、彼はギターを弾き、彼は歌い、自分は彼の作った音楽を聴いたり、彼が歌詞の上に載せた意味を考えたり、
ガラスの箱によく澄んだ水を入れ魚を飼い、魚が快活に泳ぐ姿を眺めたり、そんな些細で退屈とも言えるしかし確かに幸福な日々を過ごしていた。
互いの部屋の模様替えをしたり、互いの写真を撮り合ったりもした。誠不思議なもので、けして自分の顔や体の造形の話ではないが、彼が撮る私の写真は常に美しかった。
自分は幸福だった、幸福と呼ぶには余りあるほど。己が死んでも渇望してやまなかった戻らない幸福が今この手の中にあるのだ。
この森のこのアパートでは、まるで時が止まっているかのようだったし、実際そうと言っても間違いではないだろう。
自分が望む限りの希望と光だけを詰め込んだ戻らない過去の夢。
目が覚めて、君のことを思った。








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今日もサイレンの音で目が覚める。そして手錠をかけられる夢を見る。
目が覚め、夢だ、と思って心から安堵する。
自分がかつてその粘着質な夢の中に立っていたことを考えると誠に不可思議な気分になる。
煙草に火を点ける。
あの場所に流れる音楽はなかった。
木々を風が撫でた。砕かれ合う波が光っていた。散った山茶花が路上を染めていた。名も知らぬ鳥が空を裂く姿を見たのはいつ振りだっただろう。
それを美しいと思った。大団円はない。深く理解していた。
それでも、どれだけもう一度会いたいと願ったことか。涙を流すに相応しい理由は、いくら探しても自分の手の届くところにはなかった。








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雪が降る日は、君が迎えに来てくれる気がする。
学校に行く日も、そうでない日も、友人のかばんには大抵、大して中身の入っていない財布と煙草とライターしか入っていなかった。
自分もさして変わりはなかったが、自分と友人にとってそれ以外は必要なかったからだ。
図書室の奥のベランダ、保健室のベッド、美術室の倉庫、誰一人いないプールサイド。
我々はときに様々な場所に逃げた。
保健室のベッドのカーテンは淡いオレンジ色で、まるで本当に陽だまりの中にいるようだった。
オレンジ色のカーテンが揺れる。
君が眠るとき、長い睫毛に縁取られたその目が伏せられ、子猫のようだったことを知っている。
暖かい毛布から伸びた華奢な手が美しかったことを知っている。
こうして傷口を辿って戻らない過去を繰り返すことの何がならないのか。そんなことを決めた人間がいるのだとしたら、刺して殺してやりたい。
思ったより汚れてしまったこの手で何を払えば、この街の君の部屋で、宝石の数だけを数えられるのか。
祈りも誓いも憧れも願いも魔法も導も砕けてこの砂漠の砂の一粒となる。自分が歩み続けるこの砂漠はそうやって構成されているのだ。








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君の足音で目を覚ますまで眠り続けたいと思っていた。
本当に世界に美しいものや理解できるものがあるのだとしても、あのとき君と見つけた流れ星が、スパンコールが、鮮やかに光るものが、本当は砂粒や路傍の石だったとしても、君の足音が止まるまで、自分は眠り続けたいと思っていた。
この身に積もった灰が重く、立ち上がるのも嫌になったことなど疾うに数えきれない。








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我々は流星の町で出会った。
十何年も前、幼い自分と友人が出会ったこの町が日本で一番星が綺麗に見えると呼ばれていたのが所以だ。
星と街の灯以外何もない。どこにでもある凡庸な田舎の景色だ。
この町、あの部屋、我々の胸に流れる音楽は、英語の歌詞ばかりで正直に言うと彼らが何を歌っているのか学がない自分にはさっぱり分からなかった。
恐らく友人はその意味を理解していたが、ついに一度たりとも自分に教えることなくある日唐突に自分の前から姿を消した。
唯一覚えているのは、yeah my life is shit、人生はクソだということ。








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